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2011.01.29 (土)

「 『これから30年間』米中摩擦の深まりを印象づける首脳会談 」

『週刊ダイヤモンド』   2011年1月29日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 872

1月18日、中国の胡錦濤国家主席が国賓として米国を訪れた。翌朝の公式歓迎式典でオバマ大統領は、「一人ひとりに人類普遍の人権が認められ、すべての国家がその権利と責任を固く守るとき、社会は調和し、国家は成功し、世界に正義が通用することを歴史は示している」と述べて、人権問題を取り上げた。

続いて挨拶した胡主席は「われわれの協力は互恵に基づかなければならない」という抽象的表現にとどまった。

この1年、とみに緊張の要素が浮上した米中関係の今後を占うのが胡主席の訪米だった。

「ニューヨーク・タイムズ」紙は、中国政府による人民元の為替レートの操作、北朝鮮とイランへの肩入れ、人権蹂躙、米海軍への挑戦の四点を掲げて、この横暴な振る舞いに及ぶ中国の指導者を米国は21発の礼砲や正式の晩餐会で迎えるのかと、社説で非難した。

オバマ大統領が、人権や安い人民元問題などをはたして問題提起するのか、その場合、中国はどう反応するのかが、米国はじめ国際社会の注目点だった。はたして中国側がチベット、台湾、南シナ海などに用いてきた「核心的利益」という独善的で専横的な言葉を使うか否かも注目されていた。

そうしたなかでの米中首脳会談初日の最初のスピーチから、オバマ大統領が人権に言及し、胡主席が核心的利益を口にしたことが、今回の首脳会談の基本的性格を物語っていたといえる。

正午過ぎ、財界人を招いての円卓会議で、大統領は、いかにして知的財産権を守りうるか、具体案を聞きたいと語った。円卓会議のあとの共同記者会見で大統領は、米国の知的財産に対して中国では10件に1件しか対価が支払われていないとも語っている。

だが、この知的財産権問題について胡主席は円卓会議でも、いっさい言及せず、互恵的協力という抽象的言葉に終始した。そして、その後に内外記者団を前にした共同記者会見が開かれたのだ。

オバマ大統領は、イラン、北朝鮮、スーダンについて、中国が友好的な役割を果たすことの重要性を指摘し、釘を刺した。再度知的財産権に言及し、さらに人民元、南シナ海を含む東アジアでの航行、北朝鮮、イランについても問題提起した。

人権問題についてはさらに、「米国の基本として人類普遍の価値、基本的人権、言論出版の自由、報道、表現の自由、結社・集会の自由、信教の自由にコミットする。これらは中国憲法にも明記されている」と、中国の最も忌み嫌う点に踏み込んだ。

チベット問題でも、「米国は、中国政府とダライ・ラマ法王の対話および、チベット仏教とチベット人の証しである文化の存続を支持する」と強調した。

米国の明確な意思表示に胡主席はさぞ苦々しく思ったことだろう。各国にはそれぞれの立場があると語るのみで、事実上答えなかったのである。

するとAP通信が「米国は、検閲と国民への弾圧で知られる中国と協力を深めていくことができるのか」「胡主席は中国の人権状況を正当化できるのか」と、問うた。

オバマ大統領は米中関係は過去30年間で大きく変化した、これからの30年間でまた変わっていくと答えたが、硬い表情の胡主席はいっさい答えなかった。

すると米国のブルームバーグTVがまたもや胡主席に、先ほど答えなかった人権問題について答えよと迫った。

胡主席は「中国は常に人権の尊重に努めてきた。すでに大幅な改善がなされてきたことは世界に広く知られている」と答えたが、白けるばかりだ。

米中間の摩擦の深まりを印象づける首脳会談だったが、日本にとっては、日米関係の改善で弾みをつける好機となった。わが国政府はそれを生かし切るだろうか。

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櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。
「 『これから30年間』米中摩擦の深まりを印象づける首脳会談 」

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